あなたの周囲のノイズ(電磁環境)は大丈夫ですか ?
ノイズトラブルとノイズ対策ここでは電子/電気機器の誤動作やストップ等の古典的なノイズトラブルについて、筆者の単行本 「マイコン技術者スキルアップ事典」 (CQ出版・1992年)の図と文章を用いて簡単に解説します。10年前のこの本では「マイコンシステム」 となっていますが、現実にはあらゆる電気・電子機器が多数のCPU制御となっている時代ですので、 「全ての電子機器/電気装置」と考えても結構です。10年前といっても、原理と対策の基本部分は まったく変わっていないことに驚かされます。
地球環境問題とノイズ
電力品質(PowerQuality)
![]() IT化の普及した現在では、施設・設備の電子的/電気的なシステム全体について、電源の高周波ノイズは直接的に悪影響をもたらします。なぜなら、IT化された機器では、「1. 表皮効果」およびトランス、モーター、発電機などの磁気コアにおける「2. コア損失」が必然的に影響するからです。この2点については後述します。 あらゆるIT機器(電子化/情報化された、あらゆる電子電気機器/装置/設備)に搭載されているマイクロプロセッサ(CPU)は、本質的にクリーンな電源を要求します。この種の機器は、完璧に動作するためには歪みのない直流電源電圧を必要とし、AC電源ライン電圧の瞬間的変動(ノッチ[瞬間的低下]やスパイク[瞬間的上昇])や、大電流のON/OFFに伴う電源電圧の変形などに特に敏感です。また、高い周波数領域の電源高調波電流は電子機器同士を接続する信号ケーブルに電圧ノイズを誘起します。それらは電圧波形にゼロクロスを引き起こし(ゼロ点付近でのノイズ振動により多数回のゼロクロスと誤計測される)、システム動作の基準クロックとして電源の60Hz(通常は毎秒120回のゼロクロスがある)という周波数を利用しているマイクロプロセッサや電子システムを誤動作させます。 電子機器やそれを構成するディジタル電子部品のマニュアルは、機器としても部品単位でも、供給される全ての電源電圧が10パーセント以内の変動であることを(正常動作の必要条件として)要求しています。電源電圧の歪みや変動は機器や部品の性能を低下させるだけでなく、時には危険な結果に至ります。ディジタル電子部品(CPUやLSIなどの半導体)はクリーンな電源を要求しますが、そのためのスイッチング(インバータ)電源装置は電源ラインで反射する高調波電流を発生し、これが電源の歪みを生んでいる、という奇妙な図式なのです。 この10年間で、コンピュータの情報処理のスピードと転送され蓄積されるデータの総量は驚くほど向上しました。ところがコンピュータが高速になるほど、電源の歪みに対する鋭敏性も増しています。次の10年間にさらにコンピュータは15倍ほど(マルチユーザとワークステーションでは10倍、グラフィックスーパーコンピュータでは5倍ほど)スピードアップすると予想されていますが、これはそれだけ、電源の歪みや汚染に対しての耐性が低下することを意味しています。 ![]() 交流(AC)電流の流れる導体の「表皮効果」とは、以下の傾向のことです。導体の自己インダクタンスの作用によって、導体を流れる電流というのは、その導体内部でも外側、つまり「表皮」側に集まる性質があります。これによって導体の実質的な抵抗値は増大し、低電流領域においては導体の温度上昇に寄与します。表皮効果が非常に重要になるのは、たくさんの導体が平行に配置されて大電流バスを構成する場合です。交流電流の周波数が上昇すると、導体を流れる電流密度の不均一さがより増大しますが、これが「表皮効果」と呼ばれる現象です。これは、交差している磁束がある場合には導体の交流的抵抗(リアクタンス)をより増大させる効果があります。この電磁的効果は導体の周辺部よりも中心部でより大きいので、電圧ポテンシャル(電位)は導体の周囲から中心に向かう流れに反発する方向です。その結果、電流はさらに導体の外側(表皮側)を流れるように強制され、導体の有効な面積を減少させます。導体の有効な面積がこのように低下して実質的な抵抗が増大することで、損失が生じます。 ![]() 鉄または鋼のサンプルを交差する磁界によって磁化する実験をしてみると、磁束密度(B)と磁化力(H)との関係は上図のように、磁気強度の値を増加させる時と減少させる時とでは異なったルートを描きます。この現象は熱を生み出し、エネルギー消費となる不可逆過程です。交流電流の1サイクルごとにこの磁束は上図のヒステリシスループを1周することになります。トランス、モーター、発電機などで一般的な磁気コアに着目すると、交流(AC)電流がこの磁気コアの周囲に巻かれた状態で磁界が生成されることで、磁気コアの内部には磁束が発生します。もし交流電流の周波数が60Hzで(波形が純粋なサイン波形で)あれば、磁束密度と磁化力の変化グラフは上図の左側のように、ほとんど1本の線の上を行き来してエネルギーロスはありません。しかし、もし電流が60Hzよりも高い周波数成分を含んでいた場合には、上図の右側のようなヒステリシス特性が発生して、この面積に応じたエネルギーロスが、その周波数の頻度だけ発生することになります。 ![]() うず電流(Eddy Currents) - 導体内部の磁束密度の変化により導体内部に形成され発生する電流ループ。 うず電流損失 - 磁性体内部では、変化する磁束密度によって電流が発生します。このループ状の電流はあるポイントから別のポイントに電気が自由に流れるのを阻害します。 最大の効率で作動するトランスやモーターなどの設備は、過熱せず、より少ない電力を使用し、より少ないメンテナンスで済み、より故障の確率は低下し、より長持ちします。表皮効果、コア損失などのロスがあって最大の効率で作動できないトランスやモーターなどの設備は、発熱過熱し、より大きな(無駄な)電力を使用し、より頻繁なメンテナンスを必要とし、より多くの故障を引き起こし、長持ちしません。 ![]() 電源のノイズを見てみよういま、電力品質を計測するためのノイズ計測システムの試作をしている ところです。まだ完成していない途中の状況ですが、まったく簡単に 「電源のノイズ」を見ることができますので、経過報告として紹介しましょう。
新しいノイズ対策の視点すいません、この項はまだ出来ていません(^_^;)。詳しくはこの本 に書いていますので、ぜひお読み下さい。
関連リンク集
|